名車と言うべきミニバン ザフィーラ/トラヴィック

2017/05/27

持論・暴論

オペルのザフィーラと言えば、2000年からヤナセの手によって輸入されたミニバンで、後に記すとある事情で物議を醸した車である。




絶対的安定性のミニバン
ザフィーラの最大の美点は高速安定性である。アウトバーンを170km/hで安全に巡航できること、という目標の下で設計されているため、同時期の国産車(※)と比べても別格の乗り味を発揮してくれる。もちろん市街地においてもそれは同じで、若干高めの着座位置にもかかわらず、ロールが少ないため非常に安心感がある。ステアフィールもギュッと引き締まった感触で心地よい。未だにこの車に乗っている人の多くは、この走行性能に惚れ込んで、乗り換え先が見つからない、というパターンがほとんどではなかろうか?
安全装備も国産車よりも充実しており、EBD付ABS、全席三点式シートベルト、フロント・サイドエアバッグが標準装備であった。

※同時期のイプサム等と比べれば、お話にならないレベルの差があった。道路事情の違いと言ってしまえばそれまでだが。


最強の刺客現る
そんなザフィーラに最大の危機が訪れたのは2001年のこと。当時、同じくGMグループに属していたスバルから、トラヴィックの名前で全く同じ車が発売されることになったのだ。

……いや、全く同じだったらどれだけ良かったことか。

トラヴィックは2.2L 147psのエンジンを積んでいるのに対して、ザフィーラは1.8L 115ps。しかもザフィーラが単一グレードなのに対して、トラヴィックは3グレードが選択可能な上、アルミホイールは1インチでかく、足回りもスバルの手入れが為されていた。そして何よりも、ザフィーラの方が42~89万円も車両本体価格が高かったのである。
こうなってしまっては、ザフィーラに残された利点は標準装備のサイドエアバッグと「こっちはタイ産じゃないもん」という謎のプライドだけになってしまった。確かにトラヴィックはGMタイ工場で生産されていたのだが、スバルによって日本の品質基準が指示されていたし、勤勉なタイ人の活躍で本家より出来が良かったので、それすら空虚なものだったのだが……。(※)

結局、賢い消費者はトラヴィックの購入に走り、ザフィーラは一部の愛好家によって買い支えられるだけになってしまった。おまけにこの一件で輸入代理店への不信も生じ、オペルブランド撤退の一要因となってしまったのである。

※しかも伊、仏で販売されるザフィーラは一部タイ産であった。


マイナートラブルは多いが……。
やはり、と言うべきかザフィーラとトラヴィックは外車特有のトラブルが多い車である。電装系の貧弱さと部品調達性の悪さは当然として、もっとも酷いのが経年劣化で天井が落ちてくることである!これは内張りがクロス張りになっているためで、高級仕上げ故の不幸、と好意的に考えることも出来なくはないが、ブヨブヨに垂れ下がった布地はやはり不細工。しかも張替えの工賃は決して安くないのである。
とはいえマイナーな、しかもファミリーカーというジャンルの車が、今日でも一定のユーザーを確保している、ということは、欠点を差し引いても尚愛すべき点があるという証拠とも言えるだろう。