1928年のサラリーマンの労働時間が話題に

2017/03/18

社畜論

先日ネット上にアップされた"1928年のサラリーマンの一日"なるものが話題になっていたので、当時の世相の説明も加えて紹介しようと思う。


サラリーマンの一日
1928年の本によると、サラリーマンの一日は下の表のようでした。現代とあまり変わりません。昼休みだけがやや長めで、そのあいだに近くのそば屋やデパートの食堂に行って食事をしたようです。
出典:集英社 学習まんが日本の歴史 15巻

で、現代とあまり変わらないというその中身を見てみると……
8:00-9:00 通勤
9:00-12:00 仕事
12:00-14:00 昼休み
14:00-17:00 仕事
17:00-18:00 通勤
当時は土曜日出勤があったとは言え、これで"変わりない"とはよく言えたものである。ただ、ここで気を付けなければならないのは、当時のサラリーマンと呼ばれる人たちは世間一般の水準から見れば相当に恵まれた労働環境にある、特権階級であったということである。

昔はみんな農家だった
ここで戦前の就業人口比を見てみようと思う。出典は"日本戦争経済の崩壊"という日本評論社の古い本である。
これによると、1930年の全労働者の内48.1%が農林業でトップ、次いで製造工業・土建業の20.0%となる。ちなみにサラリーマンは7%程度。大昔はサラリーマンをわざわざ"月給取り"と呼んだことから分かるように、国民の大半は農業か日給制の肉体労働に従事していたのである。

どのくらいの給料だったか
1930年代の大卒サラリーマン初任給は50円/月程度。課長級ともなれば、年収数千円、超一流企業では年収1万円に届くこともあった。他の職業と比較すると、
海軍二等兵:13円/月
工員(見習い):10円/月(日給制)
工員(熟練工):50円/月(日給制)
大工(熟練):50円/月(日給制)
国家公務員初任給:75円/月
海軍大将:6,600円/年(年俸制)
こんな感じである。

当時の1円の感覚がどの程度か分からないと思うので、当時の物価の例を挙げてみる。
映画:40銭
コーヒー:10銭
米10kg:1円66銭
東京~大坂の特急乗車賃:24円18銭(1等)、8円6銭(3等)
食堂車のフルコース:1円30銭

一等車の料金が滅茶苦茶高い!この当時の一等車は文字通りのファーストクラスであって、いまどき小金持ちでも乗れるグリーン車とは格が違うのである。駅の洗面台で顔のススを落す下民を尻目に、ボーイさんの持ってきたお絞りでスッキリするのが上流階級の嗜みであった。

世間一般との恐るべき格差
あなたがもし戦前のプロの旋盤工であったとしても、ペーペーの大卒会社員とどっこいどっこいの給料という悲しい現実。だが思い出してほしいのは、就業者の大半が農家のセガレやドカタのおっちゃん、工場の下働きであるということを。単純に寿命を切り売りしている肉体労働者と異なり、手に技術を付けた熟練工員や大工の棟梁はまだ勝ち組である。


この図表は、統計局のデータを戦後にアメリカ国務省がまとめた資料から"Household Income in Japan by Income Classes,1930"という項目を抜き出したものである。
一家全体が年200円以下で生活している人間が想像以上に多いことに驚かされる。これではマッカーサーが零細農家のヒーローになるのも納得(※)。こないだまで「出てこいニミッツ、マッカーサー 出てくりゃ地獄に逆落とし」なんて歌ってた連中が、熱い手のひら返しするのも当然である。

読者諸氏も戦前のサラリーマンになりたいと思わないか!?
(まぁ、容赦なく徴兵されて下手すりゃ死ぬリスクもあるが)



※1947年に行われた農地改革のこと。私のところは地主であったので、逆に貧しくなりましたとさ。