スバル インプレッサSPORT 試乗記

2017/01/29

試乗記

昨年登場した現行インプレッサは、安全性能を全面に打ち出したTVCMでファミリー層にアピールしているが、流石にカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるだけあって、安全性能以外のところでも大幅な進歩を遂げていた。
以下に感想を述べる。試乗グレードは2.0i-S EyeSightである。


エクステリア

一見すると旧モデルからあまり変化がないように思われるが、ルーフ形状の変更やサイドに陰影を持たせたデザインの採用により、ずっとスマートな印象を与えるようになった。貧相だったリアのデザインもテールランプの大型化でかなり改善されている。
インプレッサといえば2代目のフロントマスク大迷走が思い出されるが、前型式より採用となったヘキサゴングリルやホークアイ型ヘッドライトといったデザインを継承したことで、今後のスバル車のデザイン方針が確固たるものになった、と判断して良さそうだ。
ちなみにEyeSight非装着の廉価グレード廃止に伴い、ベースグレードからアルミホイールが標準装着となっている。


インテリア

「スバル車のインテリアに期待してはいけない」と以前はよく言われたものだが、ここ数年は大幅な改善努力が行われたと見え、前型式では他社同クラス並、今回は水準をやや上回る程度にまで充実した。今までは事務的に並んでいたスイッチやエアコンの吹出口の形状が洗練されているあたりにその努力は現れている。
シートの質感の向上も顕著で、無駄な体の沈み込みが無く、それほどタイトな作りでもないので長距離のドライブでも疲れにくいであろうと感じる。
ドライバーの視界の良さ、直感的に扱いやすいダイヤル式のスイッチ等のスバルらしい配慮の良さはこれまで通り変わらない。小型車からの乗り換えでも不安なく扱えるだろう。
不満点があるとすればブラック以外の内装が選択できないこと、専用設計のPanasonicナビ以外は取り付け位置が低すぎることであろう。


走行性能

今回は開発にあたってシャシー設計を一から見直した自信作と言うこともあって、走行性能は劇的に向上している。正直言ってこの価格帯の車には勿体無いくらいの出来栄えだ。
先代のインプレッサは路面からのインフォメーションの伝わり方が軽く、走行中の騒音もザワザワしていたこともあってどうも軽薄な乗り心地であったが、現行型は走り始めてすぐに明らかに足回りの動きや路面のショックの伝わり方が改善されているのが感じられる。試乗グレードは18インチのホイールを装着した最もスポーティーなグレードだが、それでもバタつきや刺々しさはしっかりと抑えられていて好印象である。
エンジンの方は先代と比べ4psの向上があったのみだが、出力特性やCVTの制御に大幅な改良があったようで、額面以上にトルクの立ち上がりやスムーズさが増している。レヴォーグの1.6Lターボ車と比べれば絶対的なパワーでは見劣りするが、日常利用では自然なフィーリングでレスポンスも良いインプレッサの方が扱いやすいだろう。ただSモードでの制御はもう少し改善がほしい所。もっとレッドゾーンまでストレス無く回せるようにして欲しい(そういう車ではないのは承知しているが)
車内の静粛性についても、同価格帯の車両に比べれば水準以上と言ってもいいだろう。ただ、試乗日は快晴であったので降雨時のルーフの遮音性まで評価することはできなかった。


その他

今回のインプレッサの目玉は運転支援システムEyeSightの標準装備を含めた安全装備の充実である。ボディ構造の見直しによって衝撃吸収率が現行比1.4倍となったほか、歩行者用エアバッグも含め8つの安全装備を全グレードに装備している。本来であればどのメーカーもこの姿勢を見習って安全装備の強化に力を入れるべきなのだが……。
ともあれ安全を第一とする車が国産メーカーの中から登場したことは歓迎すべきであるし、ユーザーの意識も高まってきているという点では非常に喜ばしいことでもある。

※実のところ富士重工は以前から目に見えない安全装備にも力を入れていたのだが、積極的に宣伝を始めたのはここ最近のことである。今まで実に勿体無いことをしていたように思う。

ただ一点苦言を出すとするならば、側後方警戒装置やオートハイビームを含めた"アドバンスドセイフティーパッケージ"がメーカーオプションとなっていることである。たかが54,000円の装備ではないか。その程度上乗せされたからと言って、購入を諦める人もあるまいと思うのだが……。


総評

今回のインプレッサは、安全性能の面でライバル車を大きく引き離しただけでなく、純粋に自動車としての作り込みも真面目で素晴らしいものとなっている。とにかく扱いやすい一台に仕上がっているので、年配者から新社会人世代まで、どの世代の人間でも満足できるだろう。また従来のインプレッサは男性向けの硬派なイメージが強かったが、今回のモデルは女性にも受け入れられやすい仕上がりであると思う。先入観なく、まずは試乗してみることをオススメする。


諸元/インプレッサSPORT 2.0i-S EyeSight

全長:4,460mm
全幅:1,775mm
全高:1,480mm

ホイールベース:2,670mm
トレッド:1,540mm(前)/1,545mm(後)
最低地上高:130mm
最小回転半径:5.3m

車両重量:1,400kg
車両総重量:1,675kg
乗車定員:5名

エンジン:FB20 水平対向4気筒DOHC
総排気量:1,995cc
最高出力:154ps/6,000rpm
最大トルク:20.0kgfm/4,000rpm

燃料タンク容量:50L
燃費:15.8km/L(JC08)

駆動方式:AWD
変速機:CVT(7速マニュアルモード付)
サスペンション:ストラット(前)/ダブルウィッシュボーン(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前/後)
タイヤ:225/40R18(前/後)