2016/11/27

車で一番お金をかける所

いざ車を買って、どこか弄ろうとしたとき、一番お金をかけるべきところはどこだろうか?

-かっちょええホイールを買うぜ!
まぁ、それもよかろう。

-スピーカー変えようかな
それもまた良し。

-純正の状態でしか乗らないよ
大多数の人はそうだろう。だが、純正主義者であっても長く車に乗ると必ず選ばなければならないものが出てくる。ズバリ、タイヤである。



現役時代、タイヤ交換のお客に見積もりを持っていくと、大抵「げっ!」という顔をされた。「18インチ履いてるあなたのせいですよ」とも言えず、その度にタイヤの重要性を説明して、仮に量販店で交換するにしても安易に格安タイヤを選ばないように、と忠告していたものである。(もちろんミシュラン党のオジサンや、NEOVAやSTAR SPECを好んで買っていくマニアも相当数居たが……)
確かにこのタイヤという商品、黒い色をしたゴムの輪っかとして見れば非常に割高に感じるかもしれない。だが、1tを軽く超える重量を支えながら、100km/hでアスファルトに擦り付けられてもびくともしないゴム製品だ、と考えれば決して高い買い物ではないだろう。しかも"ただの輪っか"のくせに大切な命を任せているのである。交換の際にはなるべく良いものを選びたい。特にこだわりの無い人でも、「新車装着と同等品で」と、注文しておけば間違いは無いだろう。もちろん、日頃の空気圧チェックや、残り溝の確認も怠ってはならない。
※JAFの高速道路上での出動要因No.1はタイヤのトラブルである。

ちなみに一番残念なのが、高級車に謎の格安タイヤを履かせているパターンだ。ネクセンやハンコックといった有名どころのアジアンタイヤと違って、生産国すら不明な怪しいブツは、しばしばインチアップされた派手なホイールとセットで登場する。確かに走れば良い、見た目重視だ、という人もいるのだろうが、消しゴムを丸めたレベルのタイヤと、ミシュランやコンチネンタルといった名門のタイヤを比べてみれば、素人でもハッキリと分かるくらいの作りの違いがある。そんなものを高速巡航前提の高級車につけるのは、スーツに便所スリッパの出で立ちと言った感で、全く見るに堪えない。
車の美観はまず足回りから。車格にふさわしいタイヤを履かせたいものである。

2016/11/20

ポルシェ カイエンへの辛辣なコメント

とある三河商人が、「実はSUVに快適性を求めても良いんだよ。世の中の大多数はラダーフレームだとか、デフロックだとか求めてないんだよ」ということを知らしめて以来、ありとあらゆるメーカーからSUVが発売されるようになった。



そして2002年、ポルシェからもついにカイエンが発売された。なんでもポルシェオーナーの1/3はSUVを持っているから、いっそのこと……という理由らしい。これを迎え入れた旧来のユーザーの反応は様々で、「ポルシェらしい出来」と評価する一方で、ブランドの安売りを危惧する声も多かった。私が知る中で最も辛辣だったのは、英国のモータージャーナリストであるクレイグ・チータム氏の評価で、いかにも英国人らしい素敵な悪意に満ちた文章であったので、紹介しようと思う。


イデオロギーは間違いだらけで、そのため筋金入りのポルシェ・ファンからは軽蔑の目を向けられている。(中略)このカイエンが絶対に欲しいという輩は、道交法や他人の迷惑を顧みずに校門の前に堂々と横付けして、自慢のデザイナーズブランドのブースターシートから自慢のご子息をおろすところを他人にみせびらかしたくてたまらない人種でもある。
The World's Worst Cars(2010)より


ここからは私の個人的見解だが、凡そは氏の意見と同一である。確かにカイエンは優れたパフォーマンスのエンジンを積んでいるし、実際に運転してみてもボディーサイズの割に機敏な動きを見せる。"高性能な背の高い乗用車"としての出来は良い。だが、スポーティーとは対極のボディに無理やりブチ付けたポルシェフェイスはさながら食用ガエルのようで不格好であるし、そもそもこの類の車をポルシェで買う必要があるのだろうか。ランドローバーのようなもっともらしいブランドを差し置いてポルシェを買い求めるのは、寿司屋でケーキと食後のコーヒーを注文するような場違い感がある。
この車も結構売れているらしいが、もし寿司屋のケーキしか味わったことのない人が居るのなら、それは非常にもったいないことだ。現行のケイマンはお手頃で、ドライビングも非常に楽しいので是非一度乗ってみるべきだろう。食後のコーヒーはそれからでも十分だ。

ちなみにポルシェ自身はカイエンを"新しいカタチのスポーツカー"と称しているらしいが、戦前の"誰も乗っていない国民車"以来のクールなジョークである。

2016/11/13

BMW 640i Gran-Coupe 試乗記

かつて日本で"背の低い4ドア"が持て囃された時代があった。大抵はドアに窓枠の無いサッシュレス型で、これをハードトップと称し、若者達がこぞって買い求めた。だが、安全規制とコストの高まりによって、バブルの終焉と共にその勢力を縮小。2009年、レガシィのフルモデルチェンジによってついに国産車からサッシュレス4ドアが姿を消す事となったのである。
ところが2005年、メルセデスから4ドアクーペのCLSが発売され、これが一気に世界の話題をさらうと、続けざまにシトロエン・C6、5ドアのアウディ・A7等の欧州勢が上陸し、日本市場はすっかり母屋を奪われた格好となってしまった。そして最後発のBMWが刺客として送り込んだ“窓枠無し族”が6シリーズグランクーペというわけである。今回は人気グレードの640i Mスポーツに試乗してみた。



エクステリア
美しい、の一言。"流麗"とか"優美"とか言った単語はこういうデザインのためにあると言ってもいい。しかも単に大人しいデザインと言うだけではなく、曲線と直線を上手く使い分けて、スポーティーな演出を施しているところが実に良い。若干、リアの造形が無愛想な気がしなくもないが、基本的にはどの方向からも人目を引く良いデザインに仕上がっている。5シリーズやEクラスのようなオジサンの入れ物からオジサンが出てきても何の感慨も湧かないが、こういう車なら「お父さんカッコいいね」と言われること請け合いである(?)。正直こういうデザインが国産車に現れないのが非常で残念でならない……。
個人的に本車エクステリアで一番気に入っている箇所が、なだらかなノーズ形状と、比較的穏やかなヘッドライトの造形である。BMWに限らず、最近の輸入車は新興国ユーザーの嗜好を反映してか、妙にキツめの表情をしているが、6シリーズに限っては成金の毒気の影響が少ないようである。

インテリア
試乗車に乗り込んでみると、おなじみMスポーツ仕様のステアリング(少し太めで表面がモチモチした不思議な奴である)がお出迎えしてくれる。メーター類はBMW特有のシンプルなものだが、液晶化されたことで、走行モードの切り替えに応じて多様な表情を見せる。表示の視認性も申し分ない。
全体的なデザインとしては、車体の大きさに比してタイトな作りになっており、視界の狭さもあってドライバーは穴ぐらに潜り込んだような格好となる。さながら段ボールから顔を出した猫の気分である。もっともこれは気分の問題であって、身長180cmの人間でも居住性に不足はないので安心してもらいたい。
後部座席については若干乗降性に難があるものの、一旦乗り込んでしまえば何の問題もなし。ドライバーズカーであっても4ドア車としての一定の空間水準は保たれている。ちなみにカタログ上3人が乗車可能とされているが、中央席はセンターコンソールを跨ぐ格好となるので、あくまでも応急用である。
この車のインテリアで文句をつけるとするならば、シート表皮の質感であろう。標準のダコタレザーはあまりにもガサガサしすぎで、価格相応の満足感を与えてくれない。オプション設定で上級仕様のシートに入れ替えることを強くオススメする。BMW自慢のIndividual仕様についてはM6で試してみたのだが、標準仕様との落差には驚くべき物がある。また、前期型で設定されていた、レザー&アルカンターラのコンビ仕様を廃止したのも残念なところである。

その他
今回の試乗車には、大型のガラスルーフが装着されていた。チルトアップのみで、スライド機構のないタイプであるが、車内の採光や後席の開放感演出のために是非とも欲しい装備であると思った。
ラゲッジスペースを見てみると、サスペンションに圧迫されていて予想以上に窮屈な印象を受けた。ゴルフや旅行の荷物が多い方は、実車での確認をお忘れなく。
オーディオに関してはオプションでBang & Olufsenが選択できるが、やや価格設定が高め。だが、標準のオーディオの完成度がそれほど高いものではないので、簡単に諦められないのが辛い。

いざ試乗へ
この車はかなり重量がある部類なのだが、そこは320psのエンジンだけあって軽快な走りを見せる。エンジンの特性も非常に扱いやすいもので、低速から必要なパワーをしっかりと吐き出してくれるし、8ATの制御も実になめらかである。走行モードをSportに切り替えると、なおスムーズな加速をしてくれるが、決して尻を蹴り上げるような過激さはなく、実に乗りやすい。確かにカタログスペックを見れば"速い車"なのだが、手に汗握って振り回すような代物ではなく、長距離を快適に移動するクルーザーとしての味付けがしっかりとなされている。
ハンドリングに関しても、比較的クイックな部類には入るが、程よい穏やかさも持ち合わせている。ステアリングを切ってすぐの反応速度については、これより俊敏な車も多いのだが、6シリーズの優れている点は、旋回中のコントロールのしやすさと安定感にある。試乗の際には旋回中と、カーブから直線に戻る際の挙動に気を付けて観察してもらいたい。
乗り心地については当然ながら少し硬めであるが、角の取れた乗り味で振動の収束も速いため、決して不快ではない。何より高速道路に持ち込めば、抜群の安定性を持ってドイツ車の本領を見せつけてくれる。

こんな人に乗ってもらいたい
本車はBMWのラインナップの中でも特異な部類で、生粋のBMW信者のための車という印象もあるが、私個人としてはこれまで国産車のみを乗り継いできた人の"浮気相手"として最適な一台であると思う。確かに高価な一台ではあるのだが、格好よし、パワーよし、ハンドリングよし、しかも後席も使えますよ、というデラックスな仕様を考えれば、十分投資する価値のある対象である。「外車ってどんな感じだろう?乗ってみようかな?」という人への最適解がここにはあるのだ。
無論欠点も無いわけではない。視界の狭さや、巨体の取り回しには難儀するだろうし、後席については5シリーズの方が快適である。だが、日常の喧騒を忘れ、ただどこかに走りに行きたい、そんな人には間違いのない一台である。


諸元/640i Gran Coupe M Sport
全長:5,010mm
全幅:1,895mm
全高:1,390mm

ホイールベース:2,970mm
トレッド:1,600mm(前)/1,665mm(後)
最低地上高:125mm
最小回転半径:5.5m

車両重量:1870kg
車両総重量:2,145kg
乗車定員:5名

エンジン:N55B30A 直列6気筒DOHC24バルブ
総排気量:2,979cc
最高出力:320ps/5,800rpm
最大トルク:45.9kgm/1,300-4,500rpm
燃料タンク容量:70L(無鉛プレミアム)
燃費:12.4km/L(JC08)

駆動方式:FR
変速機:電子制御8AT
サスペンション:ダブルウィッシュボーン(前)/インテグラルアーム(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前/後)
タイヤ:245/40R19(前) 275/35R19(後)

2016/11/03

LEXUS販売店で幻滅した話

半年ほど前のことである。マセラティ・クアトロポルテのカタログを貰うために地元の販売店を訪問した。生憎の小雨模様であったが、車を停めてすぐに受付の女性が傘を手に駆け寄ってきてくれた。単純なことながら、こういう第一印象の良さは重要。


店舗の中はルームフレグランスが効いていて、それだけでも"高級店だぞ"という雰囲気がダイレクトに伝わってくる。店内の調度品もシンプルながら質の良いもので揃えられていて非常に居心地が良い。セールス氏と談笑しつつ、展示車のギブリや試乗車のクアトロポルテをじっくりと観察させてもらった。セールス氏は若手であったが、知識も豊富で、塗装やエンジン音に関する特徴を色々と教えてもらうことができたし、話し方にも嫌味がなく、それでいて自信に溢れた物言いだったのが非常に好印象であった。
この時は「カタログだけで具体的な検討はしていませんよ」と伝えていたにも関わらず、上記のような対応であったので、帰路の頭の中はすっかりマセラティ一色であった。しかも数日後に来店御礼と試乗の案内の手紙が手書きで送られてきたのには恐れ入った(私も現役時には陳腐な手法とは思いつつも手紙を出していたのだが、いざ受け取る側になるとなかなか嬉しいものである)

さて、問題はそこから少し経ってレクサス店を訪れた時のことだ。当時、私は自分の車の代替を検討中で、候補の一つであるレクサスRCの試乗をしようと思っていたのである。電話予約をして、RC200tを用意してもらうことに。マセラティの後だったので、正直この時もかなり対応には期待していた。なにしろトヨタが誇る高級店であるし、世間の評価も上々、日本式のおもてなしを見せてくれるに違いないだろう、と。
いざ店舗に到着すると、すかさず女性店員が登場。用件を伝えるとショールム内の席へ案内される。ちょうど日差しが強い頃合いであったので、ロールカーテンが降ろされたのには流石に気が利くな、と感心。ただ、ここから担当者登場までに15分以上待たされるとは思いもよらなかった。その間、飲み物のサービスを受けるでもなく、展示車と腕時計とに視線を往復させる私……。いい加減、内装のサンプルも見飽きた頃に担当者はやって来た。他の来客対応をしていたのか、試乗車を引っ張り出してきていたのか、その辺りの事情は察するが、予約の客が来たらまず挨拶に来るのが本来の順序であろう。私なら最初に顔合わせをして、客の車の横に試乗車を持ってくる。

何はともあれ試乗は始まった。が、この担当、本当に喋らない。私も口数の少ない方であったから偉そうなことは言えないが、こちらから話を振っても
私「やはりレクサスは購入される方の年齢層は高いんでしょうか?」
担「ええ、車両価格が高いのでどうしても……」
私「……」
担「……」
始終こんな調子である。会話のキャッチボールというよりストラックアウトかボウリング。どちらが営業しているのか分からない状態だ。世間話すらしないのなら、案内はナビに任せてデッドウェイトには降りてもらったほうが良いのだが……。
試乗コースそのものもありきたりな市街地一周と言った感じで、折角の車の素性の良さを感じ取るには十分と言えなかった。なんとも言えないモヤモヤ感が残る。

試乗から戻った私は、ここでRCそのものの特徴について質問してみた。担当氏はレーザースクリュー溶接の採用や、オープンボディのシャシを用いたことによる剛性の高さをしきりにアピール。候補の一つがスカイラインであることは伝えていたので、「他車と比べて"ここは違うぞ"という点はありますか?」と訊いてみた。
担「うーん……やはり剛性の高さですかね」
私(他にないのかよ!!)
結局、この日は試乗という第一目標は達成できたものの、最後まで"営業"とか"提案"とか言ったものに接することはできなかった。
最後にカタログをもらう際、女性店員に"レクサスの良さ"について訊いてみた。彼女は色々な社会的地位が高そうな人を例に上げて「~にお乗り頂いています」といったふうに答えたが、これもピントのずれた回答であろう。オーナーの地位が車の性能やブランド価値とイコールであるなら、スズキの販売店諸君、明日から「マルチェロ・ガンディーニ氏の愛車はワゴンRです」と声高に宣伝しようではないか。

結局、このような経緯もあってRCは購入候補から外れたのであるが(車自体も私を満足させるに足らなかったというのもある)、後日レクサスオーナーの方と話をしてみると、その方の訪問時も最初は愛想のない対応で、即決の意向を示した途端、態度が180°変わったとのこと。
全国的に見てレクサス店が高い評価を得ている、というのは先に書いた通りだが、私の地域ではその限りではなかった。ここの販売員諸君は、全国の同業者の評価まで損なっていることに早く気が付いてほしい。