カルロス・ゴーン氏の三菱自会長就任について

2016/10/23

持論・暴論

三菱自動車の新会長としてカルロス・ゴーン氏の就任が報じられたのは、今月19日のことである。燃費不正問題で揺れる三菱自が、新体制でどのように生まれ変わるのか、個人的にも注目すべき話題だと思う。
ところで、カルロス・ゴーン氏については、とかく"コストカッター""高給取りの代表格"といったイメージばかりが先行しがちだが、それは極めて一面的な評価にすぎない。特に車両の性能や品質を下げて、黒字化の反動を顧客に転嫁しているなどというのは、全く的外れな意見と言っていいだろう。
低迷期の日産自動車は、とにかく悲惨の一言で、商品力低下の一方で、購買コストだけは高止まりという不思議な状態が長く続いていた。(北米でのブランドイメージの牽引役であるフェアレディZが、長らく放置されていたのを覚えている方も多いだろう)。全コストの6割を占める購買コストの問題は、当時の日産がやたらと独自の品質基準を重視したことや、サプライヤーの多くが日産社員の天下り先であり、コスト提言の働きかけが十分に行えなかったことが原因である。特に後者の問題は深刻で、ゴーン氏以前の数度にわたる改革案は尽く骨抜きにされてしまっていた。驚くべきことに他社より20~40%高い部品代を払いつつ、系列会社専用の会員制クラブは使い放題という状態で、儲からない、車が売れない、などと言っていたわけである。
かくして外部からバッサリとメスを入れられることになった日産は、現在ではルノーも含めたグループ全体で世界4位の規模となった。このあたりの経緯はもっと世間に知られるべき事柄であると思う。


追記:2018年、ゴーン氏が日産から追放されたが、これだけで日産の業績が上向くと思っている人間はおめでたいことこの上ない。もともと日産は社内の"政争"が盛んな企業である。これが「善人による悪人の追放劇」だったのか、それとも「無能VS悪人の内輪揉め」に過ぎなかったのか、今後10年は経過しなければ正しい評価は下せないだろう。