日産 セレナ 試乗記

2016/10/16

試乗記

いよいよ自動運転だ!と、鳴り物入りで登場した新型のセレナ。早速試乗する機会を得たので、感想を記そうと思う。
試乗車のグレードはハイウェイスターGである。


エクステリア

ファミリーカーらしく、至ってシンプルで癖がないデザインである。だが、先代と比べて十分なリフレッシュがなされていると言っていいし、メッキの面積を増やすことをデザインだと勘違いしている車に比べれば、ずっと良い出来であると思う。個人的にはアリなデザインだ。

追記:結局2019年8月のマイナーチェンジでオラオラ系下品グリルが装着されてしまった。まぁ、消費者の程度に合わせてメーカーがレベルを下げてきたということか。


インテリア

まず運転席に着座すると、メーターパネルが今時感満載の液晶パネルになっていることに驚く。大型のナビとパーキングブレーキのスイッチ等もよく纏まっており、車両価格を考えれば全体的に質感は良い方だろう。
視界設計についてはメーカーが謳っている通り良好だと思うが、前傾したフロントガラスのためか、やや前方の景色が遠く感じるのが気になる。
肝心の室内空間の使い勝手についてだが、ボディ全体のパッケージングはほぼ先代と同じであり、相変わらず低床にはなっていない。ただ、三列目シートの可動範囲は大きくなっているし、着座姿勢もそれほど無理のない形に収まっている点はさすが。シートの操作そのものも簡単に行える点が良い。


嬉しい機能

今回の新型から追加された機能の一つに「上下分割式リアゲート」がある。これはゲートのガラスウインドウ部分だけを開閉できるようにしたものだが、このお陰で狭い場所での開閉が容易になった他、ラゲッジスペース置いた物を荷崩れさせずに小物の出し入れができるようになっている。重いリヤゲートの開閉に辟易している奥様方は試してみる価値有り。ホンダのワクワクゲートとはまた違った方式だが、両方を比べてみるのもいいだろう。
またグレード別設定だが、ハンズフリーオートスライドドアの存在も面白い。これは車体下に足を差し入れるだけでスライドドアを開けることができる機能で、両手が塞がっているときに威力を発揮する。


走行性能はどうか

走り出して真っ先に気付いたのは妙なブレーキフィールだ。最初の信号で停止した際、制動力の立ち上がりが悪くドキッとさせられた。単純にこの車に慣れていない、というのもあるのだろうが、もう少しリニアな操作感が欲しいところだ。
乗り心地については特に気になる点もなく、全体的にソフトで快適である。サスペンションのセッティングは絶妙なところで、コンフォート寄りではあるが、ふらついて走行中に支障が出るようなことはなかった。
一方で加速感についてはガッカリな出来、と言わざるをえない。ある程度は予測していたつもりだったが、想像以上のモッサリ感である。交通の流れに乗って、まったりと走っている間は静粛性もそこそこで快適なのだが、いざ坂道などで加速しようとすると唐突にエンジンの回転数が上がり、ガサツなエンジン音が響いてくる。このあたりの性能を重視する人は、試乗の際にじっくり吟味しておいたほうが良さそうだ。


"自動"とは言えなかったプロパイロット

プロパイロットも今回初めて装備されたもので、「高速道路での一車線に限っては自動運転が可能に」などの前評判もあって期待していたのだが、その実態はレーンキープ付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の延長線上のものと言うべき代物であった。
実際に使ってみると、前述の加速の悪さもあって、前走車に置いて行かれることもしばしば。ハンドル操作のアシストについても、キツめのカーブではカクカクと断続的に操作しているのが分かるほどで、未だ過渡期的装備であるとの印象を拭えなかった。この種の装備の先駆的なものとして、スバルのEyeSight ver.3があるが、そちらのレーンキープの方が幾分丁寧な操作であるように思う。
とは言うものの、長距離走行の補助として有ると助かる装備であるのは間違いないし、このクラスに導入した事自体が意義のあることだとも言える。


総評

パワー感の無さだけは同クラスの競合車と比較しても歴然としているので、特に他メーカーからの乗り換えや、エルグランド等からのダウンサイジングを考えている人は十分な試乗を行うことをおすすめする。
それ以外の部分については価格以上の水準を持っており、ファミリーユースに限ってみれば非常によく出来た仕上がりと言える。先代同様に息の長いモデルになりそうであるから、今後の装備の発展にも期待したい。