2016/12/25

スバル レガシィB4 試乗記

スバル・レガシィといえば、平成以降のスバルの看板車種として、各世代ごとに根強いファンが居ることで知られる車種である。私自身、かつてBD4型レガシィ・セダン(※)を運転したことがあったが、非常に素性が良く乗りやすい車であったのを覚えている。

※当時はまだB4の名称は存在しない。駆動方式もFFが選択できた。

そのレガシィが大きく変わったのは、先代のBR/BM型からであった。パッケージングの軸足は北米重視となり、デザインも歴代の特徴をバッサリ捨て去ったのである。結果だけ見れば、その方針は大成功で、当時のアウトバックはアメリカで売れまくったのであるが、国内の熱心なファンからは大いに不評であった。私自身、この時のレガシィについては色々と言いたいことがあるのだが、本題から外れるため先に進めることにしよう。
今回の試乗では、上級グレードであるLimitedを試した。



エクステリア
最近の国産車全般に言えることだが、レガシィも例外なくボディサイズの拡大を続けており、現行型ではついに1,800mmを突破した。その影響か、エクステリアデザインにもある程度余裕が出来たようで、先代の絶壁ボディに比べれば、随分良好なデザインに仕上がっている。キャビンの天井高とフロント部の厚みのせいで、スポーティーとは言い難い点が残念であるが、現行型の性格を考えれば、これはこれで有りかとも思う。(恐らくこの辺は、居住性や安全性の為と言うより、アウトバックとの共用化の都合上制約が出来ているのではなかろうか)


インテリア
これも先代に比べ、大きく改善されたが、センターコンソールのスイッチ類の配置はやや事務的に過ぎる感じで殺風景。
一番気になったのがメーター部分で、視認性は良いのだが、プラスチック感丸出しで頂けない。ここだけはWRXの方が良く出来ている印象。リング状に光らせる前にもう少し工夫すべきであろう。
全体的に見て、車格に見合った水準まであと一歩足らず、といったところか。


ユーティリティ
純粋な"実用車"と見た場合、本車は非常に良く出来ており、装備の充実ぶりはお値段以上と言える。
まず、駆動方式は全車AWDは当然として、ヘッドランプウォッシャー、フロントワイパーデアイサー、ヒーテッドドアミラーと言った寒冷地向け装備は標準装備。セダンには珍しいリアワイパー、これも標準装備である。元々降雪地での需要が高いだけに、このあたりは抜かりがない。
車内空間はかなり広く、頭上スペースや後部座席の足元もゆったりしている。後席用ヒーターが装備されている点もGood。USB電源の存在も嬉しいポイントである。それから忘れてはいけないのが、スバルご自慢のEyeSightの存在で、安全装置としてだけでなく、アダプティブクルーズコントロールや、レーンキープアシストが使えるというのが大変ありがたい。
奥行きのあるトランクは、当然のごとく分割式トランクスルーである。今回、トランクリッドは従来のスイングアーム式に替って、ダンパーとパンタグラフ式アームが採用されたことで、開口部と内容積が大きくなっている。旅行やゴルフにも問題なく対応できるだろう。
ナビゲーションは、新採用のハーマン・カードンサウンドシステム共着のメーカーOPか、2DINサイズのディーラーOPから選択可能である。だが、後者の場合、専用設計のPanasonicナビ以外では、パネルの余白が大きく不格好になるという致命的問題がある。ハーマン・カードンの音質に関しては個人の判断に任せたいところだが、デザインについては、従来のMacintoshに比べ、重厚感が失われてしまっているように思う。また、フォレスターにもコレが採用されたことで、レガシィだけの特別感も薄れてしまったのも残念である。


いざ試乗へ
新車で本車の購入を検討している人の多くが、まずこの大柄な車を扱いきれるか、という点に不安を持っていることだろう。とりあえず、封建時代の区画そのままの場所に住んでいるのでなければ、杞憂に終わることは間違いない。歴代を通じての美点であるが、レガシィという車は非常に視界設計が優れており、現行型においても、そのサイズ感を感じさせない見晴らしを提供してくれる。
走り出してみると、どの速度域でもステアリングが程よい重さを保っていることに感心する。比較的おとなしめのセッティングだが、走行中の不安感は全く無い。
アクセルペダルは、アルミパット付きの吊り下げ型だが、操作フィーリングは良好。ただ、"Iモード"では、もう少し発進時の挙動を穏やかにした方が良いかもしれない。パワーに関しては、街乗りや高速道路を平穏に走行する分には必要十分。CVTのフィーリングについても、アグレッシブな走りをするのでなければ、殆ど気にならないレベルであった。
乗り心地については、今回のグレードはスタブレックスライドという専用ダンパーが装着されているのだが、なるほど、路面の荒れたところでは、硬めながらも角の取れた印象の乗り味であるし、一方で旋回中のロールは少なく、しっかりと地面に張り付いたような感触を提供してくれる。あえてビルシュタインを設定しなかったのも納得の出来である。


総評
先代の最大の欠点であった、内外装の出来の悪さが大幅に改善されただけでも万々歳。しかも大衆価格のラージセダンとしては、装備、走行性能ともに上々の仕上がりとなっていて、非常にコストパフォーマンスが高い。尖った部分は無いが、車の"中庸の徳"とはこういうものかな、と考えさせられる。惜しむべきは、ハイブリッドやディーゼル、あるいはターボエンジンといった看板ネタに乏しいという点だろう。
それから、相変わらず内装については今ひとつである。上に書いたメーター以外にも、フタの開閉の質感や、スイッチ類の形状、操作感など見直してほしい点は多々ある。正直、アウトバックのようなキャラクターの実用車ならば、現状のままでも良いと思うのだが、悲しいかな日本という国は大きな大衆セダンを認めない国柄なのだ※。一応、レガシィはスバルの旗艦車種という事になっている。XV、フォレスターといったSUVの系統で見た場合、アウトバックは十分にその役目を果たしているが、一方でB4はWRX系の強烈な個性に埋没しがちである。売れ筋から外れたオマケ車種なのかもしれないが、少なくともフラッグシップたるセダンである以上は、相応の手入れをしてもらいたいものである。

※ボディサイズ、排気量、価格は正比例して当然という風潮は、日本の自動車文化の貧困によるものである。米国ではフォード・トーラス等、同種の車両が広く受け入れられている。


諸元/レガシィB4 Limited
全長:4,795mm
全幅:1,840mm
全高:1,500mm

ホイールベース:2,750mm
トレッド:1,580mm(前)/1,595mm(後)
最低地上高:150mm
最小回転半径:5.6m

車両重量:1,530kg
車両総重量:1,805kg
乗車定員:5名

エンジン:FB25 水平対向4気筒DOHC
総排気量:2,495cc
最高出力:175ps/5,800rpm
最大トルク:24.0kgfm/4,000rpm

燃料タンク容量:60L
燃費:14.8km/L(JC08)

駆動方式:AWD
変速機:CVT(6速マニュアルモード付)
サスペンション:ストラット(前)/ダブルウィッシュボーン(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前/後)
タイヤ:225/50R18(前/後)

2016/12/11

日産 ノートe-POWER 試乗記

今年11月の月間新車販売台数ランキングにおいて、日産ノートがトヨタ自動車のプリウス、アクア等を抑えて一位になったことが報じられた。日産車としては平成に入って初の快挙である。その原動力となったのは、新たに追加されたe-POWERの存在であるとのことで、早速試乗を行ってきた。
グレードはe-POWER MEDALISTである。



e-POWERの仕組み
今回ノートに加えられたこのグレードの最大の特徴は、エンジンを搭載しながらも、専ら走行はモーターの力に頼っている、という点であろう。つまり、基本的には電気自動車なのであるが、従来通りのエンジンが発電機として搭載されている、ということである。このおかげで、モーター走行のメリットを常に発揮しながら、長時間の充電や、充電スタンドの位置を気にすると言った、電気自動車特有のネガな部分を解消している点が本車最大の特徴である。この方式は、発想自体は古くから存在していたが、量産車に大々的に装備されるのは今回が初であろう。某重戦車で苦汁を舐めたポルシェ博士も草葉の陰で喜んでいるのではなかろうか。

エクステリア
2012年に現行型が登場した本車は、すっかり見慣れてしまった感もあるが、新たにVモーショングリルの採用でイメージの一新を図っている。画像で見る分には癖の強い外観であるが、実車を見てみると、それ程キツイ印象は受けない。よりスマートなデザインが好みの人は、特別仕様車のモード・プレミアを選ぶのもテであろう。また、カラーバリエーションが非常に豊富なのも嬉しい特徴だ。

インテリア
今回の試乗車は一番装備の良いグレードと言うこともあって、車格を考えれば必要十分、といったところの評価。特別豪華でもないが、決して貧相でもない。中の上クラス。
シートはブランの合皮とファブリックで、オプションでベージュ系の"プレミアムホワイトインテリア"を選択することもできる。座り心地もまずまず、と言ったところか。日常の移動手段としては十分だろう。後部座席の足元も十分な広さが確保されており、好印象である。
ちなみに、通常のバッテリーはラゲッジルーム床下に移動され、走行用バッテリーは前席下に設置されているため、居住空間は通常グレードと全く変わりがない。この点は高く評価したいところだ。

いざ試乗へ
まずアクセルを踏んで、最初にその出足の良さに驚かされる。絶対的な加速!という感じではないにしても、モーター走行特有のレスポンスの良さは素晴らしい。今回の試乗でも色々な速度域で試してみたが、高架へ続くランプでもシームレスにグイグイと登っていくのには感心した。日常生活で多用する0-60km/hの速度域で加速性能に不足を感じることはないだろう。
そしてモーター走行らしい点といえば、走行モードを"S"または"ECO"にすることで、アクセルを離している間、強力な回生ブレーキが作動し、ワンペダルで加減速が調整できるというのも本車の特徴である。この操作法で完全停車まで減速することもでき、慣れれば便利なのだろうとも思うが、残念ながら今回の試乗では、そのメリットを感じることは出来なかった。また、減速中はちゃんとブレーキランプが点灯するのだが、停止すると消灯してしまうというのもどうかと思う。(もちろんフットブレーキを使わなければいけない場面ではあるのだが)
静粛性に関しては、流石に低速域でのEV走行は非常に静か。中高速域では頻繁にエンジンが作動するが、どちらかと言えば、ロードノイズのほうが気になってくる。荒れた舗装路面で80km/h以上で走行した場合、会話に不自由するほどではないが、かなり不快なレベルになってしまう。せめて上級グレードにはもっと良いコンフォートタイヤを装着してもらいたいところだ。
乗り心地については、若干硬めでフラット寄りなセッティング。快適とまでは言えないが、価格やホイールベース等を考慮すれば相応の出来と言ったところ。
それからパワステのセッティングは非常に良好。もっとも、スポーティーとかクイックとだとか言ったことではなくて、車体の挙動とバランスが取れていて、妙な癖がない、という点においてである。

総評
コンパクトな実用車として見た場合、過不足無い出来であるといえるが、パワートレイン以外に絶対的長所といえるべき点が無いのもまた事実である。日常の足としては非常に良く出来ているが、車に個性を求めるエンスーな人が、今のお気に入りから乗り換えるだけの訴求力は残念ながら持ち合わせていない。だが、日常の足を求める人たちに対して、EVの煩わしさを排除して、その敷居を大きく下げたという点が、本車の最大の功績なのではないだろうか。

個人的に改善すべき点を挙げれば次の通り
・上級グレードのロードノイズ低減を図る
・シフトノブの操作感が軽いため、クリック感を出したほうが良い
・ステアリングに伝わる微細な振動を低減させるべき
・自動ブレーキは他社並みに性能向上すべき
・せめてフットレストくらい付けろ!

最後に参考までに、試乗車の走行前の平均燃費はメーター読みで23km/Lであった。郊外走行では27~28km/L以上は出せるであろう、というのがセールス氏のコメントであった。


諸元/ノート e-POWER MEDALIST
全長:4,100mm
全幅:1,695mm
全高:1,520mm

ホイールベース:2,600mm
トレッド:1,480mm(前)/1,485mm(後)
最低地上高:130mm
最小回転半径:5.2m

車両重量:1,220kg
車両総重量:1,495kg
乗車定員:5名

エンジン:HR12DE 直列3気筒DOHC
総排気量:1,198cc
最高出力:79ps/5,400rpm
最大トルク:10.5kgfm/3,600-5,200rpm

モーター:EM57
定格出力:95ps
最高出力:109ps/3,008-10,000rpm
最大トルク:25.9kgfm/0-3008rpm

燃料タンク容量:41L
燃費:34.0km/L(JC08)

駆動方式:FF
変速機:なし
サスペンション:ストラット(前)/トーションビーム(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前)/リーディングトレーリング(後)
タイヤ:185/65R15(前/後)

2016/12/04

新車のビニールの話

時々、町中で納車時のビニールカバーをそのままにして乗っている方を見かける。年配の人に多いように感じるが、とにかくアレはやめて頂きたい。車の挙動によっては乗員の体が滑って危険であるし、見た目も不格好。何よりシートとの間にホコリが溜まりやすく不衛生である。どうしてもオリジナルのシートを汚したくない、と言うのであれば、車種専用のシートカバーかレースのハーブカバーを付けて定期的にクリーニングした方がいいだろう。
個人的には、シート表皮の質感を重視する人間なので、あまりカバーの装着はしたくないのだが……。

ところで、このビニールシート、人によってはコイツを外す"儀式"を非常に楽しみにしている人も多いため、納車前のセッティングの時点で完全に剥いでしまうのはご法度である。とは言え、売る側からすれば、納車時の限られた時間で外すのもかなり難儀であるし(特に後席)、大量のゴミも出て不細工であるので、極力簡略したいのも事実。なので、納車前の打ち合わせの時点でこの辺りの要望を聞いておくのを絶対に忘れてはいけないのだ。私の場合、「外しておいていいですよ」と言われた場合でも、とりあえず運転席のビニールだけ残しておき、固定用のゴム紐にハサミを入れて、すぐに撤去できるように準備しておくのが常であった。
ちなみに、どこまでビニールを被せるかはメーカーによって様々で、私のいたところでは、前後席とも装着というのが基本であったが、最近のトヨタやダイハツなどは運転席のみであったと記憶している。スカイラインを購入した時は、サンバイザーや内装のあちこちにビニールと保護テープがコテコテに貼られていて、少々やりすぎな感もあり(バブル期じゃあるまいし)、どこから外していくか、記念の花束とともに思案に暮れたものである……。

2016/11/27

車で一番お金をかける所

いざ車を買って、どこか弄ろうとしたとき、一番お金をかけるべきところはどこだろうか?

-かっちょええホイールを買うぜ!
まぁ、それもよかろう。

-スピーカー変えようかな
それもまた良し。

-純正の状態でしか乗らないよ
大多数の人はそうだろう。だが、純正主義者であっても長く車に乗ると必ず選ばなければならないものが出てくる。ズバリ、タイヤである。



現役時代、タイヤ交換のお客に見積もりを持っていくと、大抵「げっ!」という顔をされた。「18インチ履いてるあなたのせいですよ」とも言えず、その度にタイヤの重要性を説明して、仮に量販店で交換するにしても安易に格安タイヤを選ばないように、と忠告していたものである。(もちろんミシュラン党のオジサンや、NEOVAやSTAR SPECを好んで買っていくマニアも相当数居たが……)
確かにこのタイヤという商品、黒い色をしたゴムの輪っかとして見れば非常に割高に感じるかもしれない。だが、1tを軽く超える重量を支えながら、100km/hでアスファルトに擦り付けられてもびくともしないゴム製品だ、と考えれば決して高い買い物ではないだろう。しかも"ただの輪っか"のくせに大切な命を任せているのである。交換の際にはなるべく良いものを選びたい。特にこだわりの無い人でも、「新車装着と同等品で」と、注文しておけば間違いは無いだろう。もちろん、日頃の空気圧チェックや、残り溝の確認も怠ってはならない。
※JAFの高速道路上での出動要因No.1はタイヤのトラブルである。

ちなみに一番残念なのが、高級車に謎の格安タイヤを履かせているパターンだ。ネクセンやハンコックといった有名どころのアジアンタイヤと違って、生産国すら不明な怪しいブツは、しばしばインチアップされた派手なホイールとセットで登場する。確かに走れば良い、見た目重視だ、という人もいるのだろうが、消しゴムを丸めたレベルのタイヤと、ミシュランやコンチネンタルといった名門のタイヤを比べてみれば、素人でもハッキリと分かるくらいの作りの違いがある。そんなものを高速巡航前提の高級車につけるのは、スーツに便所スリッパの出で立ちと言った感で、全く見るに堪えない。
車の美観はまず足回りから。車格にふさわしいタイヤを履かせたいものである。

2016/11/20

ポルシェ カイエンへの辛辣なコメント

とある三河商人が、「実はSUVに快適性を求めても良いんだよ。世の中の大多数はラダーフレームだとか、デフロックだとか求めてないんだよ」ということを知らしめて以来、ありとあらゆるメーカーからSUVが発売されるようになった。



そして2002年、ポルシェからもついにカイエンが発売された。なんでもポルシェオーナーの1/3はSUVを持っているから、いっそのこと……という理由らしい。これを迎え入れた旧来のユーザーの反応は様々で、「ポルシェらしい出来」と評価する一方で、ブランドの安売りを危惧する声も多かった。私が知る中で最も辛辣だったのは、英国のモータージャーナリストであるクレイグ・チータム氏の評価で、いかにも英国人らしい素敵な悪意に満ちた文章であったので、紹介しようと思う。


イデオロギーは間違いだらけで、そのため筋金入りのポルシェ・ファンからは軽蔑の目を向けられている。(中略)このカイエンが絶対に欲しいという輩は、道交法や他人の迷惑を顧みずに校門の前に堂々と横付けして、自慢のデザイナーズブランドのブースターシートから自慢のご子息をおろすところを他人にみせびらかしたくてたまらない人種でもある。
The World's Worst Cars(2010)より


ここからは私の個人的見解だが、凡そは氏の意見と同一である。確かにカイエンは優れたパフォーマンスのエンジンを積んでいるし、実際に運転してみてもボディーサイズの割に機敏な動きを見せる。"高性能な背の高い乗用車"としての出来は良い。だが、スポーティーとは対極のボディに無理やりブチ付けたポルシェフェイスはさながら食用ガエルのようで不格好であるし、そもそもこの類の車をポルシェで買う必要があるのだろうか。ランドローバーのようなもっともらしいブランドを差し置いてポルシェを買い求めるのは、寿司屋でケーキと食後のコーヒーを注文するような場違い感がある。
この車も結構売れているらしいが、もし寿司屋のケーキしか味わったことのない人が居るのなら、それは非常にもったいないことだ。現行のケイマンはお手頃で、ドライビングも非常に楽しいので是非一度乗ってみるべきだろう。食後のコーヒーはそれからでも十分だ。

ちなみにポルシェ自身はカイエンを"新しいカタチのスポーツカー"と称しているらしいが、戦前の"誰も乗っていない国民車"以来のクールなジョークである。

2016/11/13

BMW 640i Gran-Coupe 試乗記

かつて日本で"背の低い4ドア"が持て囃された時代があった。大抵はドアに窓枠の無いサッシュレス型で、これをハードトップと称し、若者達がこぞって買い求めた。だが、安全規制とコストの高まりによって、バブルの終焉と共にその勢力を縮小。2009年、レガシィのフルモデルチェンジによってついに国産車からサッシュレス4ドアが姿を消す事となったのである。
ところが2005年、メルセデスから4ドアクーペのCLSが発売され、これが一気に世界の話題をさらうと、続けざまにシトロエン・C6、5ドアのアウディ・A7等の欧州勢が上陸し、日本市場はすっかり母屋を奪われた格好となってしまった。そして最後発のBMWが刺客として送り込んだ“窓枠無し族”が6シリーズグランクーペというわけである。今回は人気グレードの640i Mスポーツに試乗してみた。



エクステリア
美しい、の一言。"流麗"とか"優美"とか言った単語はこういうデザインのためにあると言ってもいい。しかも単に大人しいデザインと言うだけではなく、曲線と直線を上手く使い分けて、スポーティーな演出を施しているところが実に良い。若干、リアの造形が無愛想な気がしなくもないが、基本的にはどの方向からも人目を引く良いデザインに仕上がっている。5シリーズやEクラスのようなオジサンの入れ物からオジサンが出てきても何の感慨も湧かないが、こういう車なら「お父さんカッコいいね」と言われること請け合いである(?)。正直こういうデザインが国産車に現れないのが非常で残念でならない……。
個人的に本車エクステリアで一番気に入っている箇所が、なだらかなノーズ形状と、比較的穏やかなヘッドライトの造形である。BMWに限らず、最近の輸入車は新興国ユーザーの嗜好を反映してか、妙にキツめの表情をしているが、6シリーズに限っては成金の毒気の影響が少ないようである。

インテリア
試乗車に乗り込んでみると、おなじみMスポーツ仕様のステアリング(少し太めで表面がモチモチした不思議な奴である)がお出迎えしてくれる。メーター類はBMW特有のシンプルなものだが、液晶化されたことで、走行モードの切り替えに応じて多様な表情を見せる。表示の視認性も申し分ない。
全体的なデザインとしては、車体の大きさに比してタイトな作りになっており、視界の狭さもあってドライバーは穴ぐらに潜り込んだような格好となる。さながら段ボールから顔を出した猫の気分である。もっともこれは気分の問題であって、身長180cmの人間でも居住性に不足はないので安心してもらいたい。
後部座席については若干乗降性に難があるものの、一旦乗り込んでしまえば何の問題もなし。ドライバーズカーであっても4ドア車としての一定の空間水準は保たれている。ちなみにカタログ上3人が乗車可能とされているが、中央席はセンターコンソールを跨ぐ格好となるので、あくまでも応急用である。
この車のインテリアで文句をつけるとするならば、シート表皮の質感であろう。標準のダコタレザーはあまりにもガサガサしすぎで、価格相応の満足感を与えてくれない。オプション設定で上級仕様のシートに入れ替えることを強くオススメする。BMW自慢のIndividual仕様についてはM6で試してみたのだが、標準仕様との落差には驚くべき物がある。また、前期型で設定されていた、レザー&アルカンターラのコンビ仕様を廃止したのも残念なところである。

その他
今回の試乗車には、大型のガラスルーフが装着されていた。チルトアップのみで、スライド機構のないタイプであるが、車内の採光や後席の開放感演出のために是非とも欲しい装備であると思った。
ラゲッジスペースを見てみると、サスペンションに圧迫されていて予想以上に窮屈な印象を受けた。ゴルフや旅行の荷物が多い方は、実車での確認をお忘れなく。
オーディオに関してはオプションでBang & Olufsenが選択できるが、やや価格設定が高め。だが、標準のオーディオの完成度がそれほど高いものではないので、簡単に諦められないのが辛い。

いざ試乗へ
この車はかなり重量がある部類なのだが、そこは320psのエンジンだけあって軽快な走りを見せる。エンジンの特性も非常に扱いやすいもので、低速から必要なパワーをしっかりと吐き出してくれるし、8ATの制御も実になめらかである。走行モードをSportに切り替えると、なおスムーズな加速をしてくれるが、決して尻を蹴り上げるような過激さはなく、実に乗りやすい。確かにカタログスペックを見れば"速い車"なのだが、手に汗握って振り回すような代物ではなく、長距離を快適に移動するクルーザーとしての味付けがしっかりとなされている。
ハンドリングに関しても、比較的クイックな部類には入るが、程よい穏やかさも持ち合わせている。ステアリングを切ってすぐの反応速度については、これより俊敏な車も多いのだが、6シリーズの優れている点は、旋回中のコントロールのしやすさと安定感にある。試乗の際には旋回中と、カーブから直線に戻る際の挙動に気を付けて観察してもらいたい。
乗り心地については当然ながら少し硬めであるが、角の取れた乗り味で振動の収束も速いため、決して不快ではない。何より高速道路に持ち込めば、抜群の安定性を持ってドイツ車の本領を見せつけてくれる。

こんな人に乗ってもらいたい
本車はBMWのラインナップの中でも特異な部類で、生粋のBMW信者のための車という印象もあるが、私個人としてはこれまで国産車のみを乗り継いできた人の"浮気相手"として最適な一台であると思う。確かに高価な一台ではあるのだが、格好よし、パワーよし、ハンドリングよし、しかも後席も使えますよ、というデラックスな仕様を考えれば、十分投資する価値のある対象である。「外車ってどんな感じだろう?乗ってみようかな?」という人への最適解がここにはあるのだ。
無論欠点も無いわけではない。視界の狭さや、巨体の取り回しには難儀するだろうし、後席については5シリーズの方が快適である。だが、日常の喧騒を忘れ、ただどこかに走りに行きたい、そんな人には間違いのない一台である。


諸元/640i Gran Coupe M Sport
全長:5,010mm
全幅:1,895mm
全高:1,390mm

ホイールベース:2,970mm
トレッド:1,600mm(前)/1,665mm(後)
最低地上高:125mm
最小回転半径:5.5m

車両重量:1870kg
車両総重量:2,145kg
乗車定員:5名

エンジン:N55B30A 直列6気筒DOHC24バルブ
総排気量:2,979cc
最高出力:320ps/5,800rpm
最大トルク:45.9kgm/1,300-4,500rpm
燃料タンク容量:70L(無鉛プレミアム)
燃費:12.4km/L(JC08)

駆動方式:FR
変速機:電子制御8AT
サスペンション:ダブルウィッシュボーン(前)/インテグラルアーム(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前/後)
タイヤ:245/40R19(前) 275/35R19(後)

2016/11/03

LEXUS販売店で幻滅した話

半年ほど前のことである。マセラティ・クアトロポルテのカタログを貰うために地元の販売店を訪問した。生憎の小雨模様であったが、車を停めてすぐに受付の女性が傘を手に駆け寄ってきてくれた。単純なことながら、こういう第一印象の良さは重要。


店舗の中はルームフレグランスが効いていて、それだけでも"高級店だぞ"という雰囲気がダイレクトに伝わってくる。店内の調度品もシンプルながら質の良いもので揃えられていて非常に居心地が良い。セールス氏と談笑しつつ、展示車のギブリや試乗車のクアトロポルテをじっくりと観察させてもらった。セールス氏は若手であったが、知識も豊富で、塗装やエンジン音に関する特徴を色々と教えてもらうことができたし、話し方にも嫌味がなく、それでいて自信に溢れた物言いだったのが非常に好印象であった。
この時は「カタログだけで具体的な検討はしていませんよ」と伝えていたにも関わらず、上記のような対応であったので、帰路の頭の中はすっかりマセラティ一色であった。しかも数日後に来店御礼と試乗の案内の手紙が手書きで送られてきたのには恐れ入った(私も現役時には陳腐な手法とは思いつつも手紙を出していたのだが、いざ受け取る側になるとなかなか嬉しいものである)

さて、問題はそこから少し経ってレクサス店を訪れた時のことだ。当時、私は自分の車の代替を検討中で、候補の一つであるレクサスRCの試乗をしようと思っていたのである。電話予約をして、RC200tを用意してもらうことに。マセラティの後だったので、正直この時もかなり対応には期待していた。なにしろトヨタが誇る高級店であるし、世間の評価も上々、日本式のおもてなしを見せてくれるに違いないだろう、と。
いざ店舗に到着すると、すかさず女性店員が登場。用件を伝えるとショールム内の席へ案内される。ちょうど日差しが強い頃合いであったので、ロールカーテンが降ろされたのには流石に気が利くな、と感心。ただ、ここから担当者登場までに15分以上待たされるとは思いもよらなかった。その間、飲み物のサービスを受けるでもなく、展示車と腕時計とに視線を往復させる私……。いい加減、内装のサンプルも見飽きた頃に担当者はやって来た。他の来客対応をしていたのか、試乗車を引っ張り出してきていたのか、その辺りの事情は察するが、予約の客が来たらまず挨拶に来るのが本来の順序であろう。私なら最初に顔合わせをして、客の車の横に試乗車を持ってくる。

何はともあれ試乗は始まった。が、この担当、本当に喋らない。私も口数の少ない方であったから偉そうなことは言えないが、こちらから話を振っても
私「やはりレクサスは購入される方の年齢層は高いんでしょうか?」
担「ええ、車両価格が高いのでどうしても……」
私「……」
担「……」
始終こんな調子である。会話のキャッチボールというよりストラックアウトかボウリング。どちらが営業しているのか分からない状態だ。世間話すらしないのなら、案内はナビに任せてデッドウェイトには降りてもらったほうが良いのだが……。
試乗コースそのものもありきたりな市街地一周と言った感じで、折角の車の素性の良さを感じ取るには十分と言えなかった。なんとも言えないモヤモヤ感が残る。

試乗から戻った私は、ここでRCそのものの特徴について質問してみた。担当氏はレーザースクリュー溶接の採用や、オープンボディのシャシを用いたことによる剛性の高さをしきりにアピール。候補の一つがスカイラインであることは伝えていたので、「他車と比べて"ここは違うぞ"という点はありますか?」と訊いてみた。
担「うーん……やはり剛性の高さですかね」
私(他にないのかよ!!)
結局、この日は試乗という第一目標は達成できたものの、最後まで"営業"とか"提案"とか言ったものに接することはできなかった。
最後にカタログをもらう際、女性店員に"レクサスの良さ"について訊いてみた。彼女は色々な社会的地位が高そうな人を例に上げて「~にお乗り頂いています」といったふうに答えたが、これもピントのずれた回答であろう。オーナーの地位が車の性能やブランド価値とイコールであるなら、スズキの販売店諸君、明日から「マルチェロ・ガンディーニ氏の愛車はワゴンRです」と声高に宣伝しようではないか。

結局、このような経緯もあってRCは購入候補から外れたのであるが(車自体も私を満足させるに足らなかったというのもある)、後日レクサスオーナーの方と話をしてみると、その方の訪問時も最初は愛想のない対応で、即決の意向を示した途端、態度が180°変わったとのこと。
全国的に見てレクサス店が高い評価を得ている、というのは先に書いた通りだが、私の地域ではその限りではなかった。ここの販売員諸君は、全国の同業者の評価まで損なっていることに早く気が付いてほしい。

2016/10/30

ディーラーへの就職 向いている人、向かない人

「自動車の営業ってどうやったらなれるんですか?」

そんな質問をインターネット上で時々見かける。
ハッキリ言おう。何も特別なことなんて無い。大卒の肩書を持った人間で、ごくごく平均的な人間なら大抵の場合採用される。離職率の高い業界ゆえ、出る門が広いぶん、入口も広いのである。

2016/10/23

カルロス・ゴーン氏の三菱自会長就任について

三菱自動車の新会長としてカルロス・ゴーン氏の就任が報じられたのは、今月19日のことである。燃費不正問題で揺れる三菱自が、新体制でどのように生まれ変わるのか、個人的にも注目すべき話題だとおもう。

ところで、カルロス・ゴーン氏については、とかく"コストカッター"や"高給取りの代表格"といったイメージばかりが先行しがちだが、それは極めて一面的な評価にすぎない。特に車両の性能や品質を下げて、黒字化の反動を顧客に転嫁しているなどというのは、全く的外れな意見と言っていいだろう。
低迷期の日産自動車は、とにかく悲惨の一言で、商品力低下の一方で、購買コストだけは高止まりという不思議な状態が長く続いていた。(北米でのブランドイメージの牽引役であるフェアレディZが、長らく放置されていたのを覚えている方も多いだろう)。全コストの6割を占める購買コストの問題は、当時の日産がやたらと独自の品質基準を重視したことや、サプライヤーの多くが日産社員の天下り先であり、コスト提言の働きかけが十分に行えなかったことが原因である。特に後者の問題は深刻で、ゴーン氏以前の数度にわたる改革案は尽く骨抜きにされてしまっていた。驚くべきことに他社より20~40%高い部品代を払いつつ、系列会社専用の会員制クラブは使い放題という状態で、儲からない、車が売れない、などと言っていたわけである。
かくして外部からバッサリとメスを入れられることになった日産は、現在ではルノーも含めたグループ全体で世界4位の規模となった。このあたりの経緯はもっと世間に知られるべき事柄であると思う。


2016/10/16

日産 セレナ 試乗記

いよいよ自動運転だ!と、鳴り物入りで登場した新型のセレナ。早速試乗する機会を得たので、感想を記そうと思う。
試乗車のグレードはハイウェイスターGである。



エクステリア
ファミリーカーらしく、至ってシンプルで癖がないデザインである。だが、先代と比べて十分なリフレッシュがなされていると言っていいし、メッキの面積を増やすことをデザインだと勘違いしている車に比べれば、ずっと良い出来であると思う。個人的にはアリなデザインだ。

インテリア
まず運転席に着座すると、メーターパネルが今時感満載の液晶パネルになっていることに驚く。大型のナビとパーキングブレーキのスイッチ等もよく纏まっており、車両価格を考えれば全体的に質感は良い方だろう。
視界設計についてはメーカーが謳っている通り良好だと思うが、前傾したフロントガラスのためか、やや前方の景色が遠く感じるのが気になる。
肝心の室内空間の使い勝手についてだが、ボディ全体のパッケージングはほぼ先代と同じであり、相変わらず低床にはなっていない。ただ、三列目シートの可動範囲は大きくなっているし、着座姿勢もそれほど無理のない形に収まっている点はさすが。シートの操作そのものも簡単に行える点が良い。

嬉しい機能
今回の新型から追加された機能の一つに「上下分割式リアゲート」がある。これはゲートのガラスウインドウ部分だけを開閉できるようにしたものだが、このお陰で狭い場所での開閉が容易になった他、ラゲッジスペース置いた物を荷崩れさせずに小物の出し入れができるようになっている。重いリヤゲートの開閉に辟易している奥様方は試してみる価値有り。ホンダのワクワクゲートとはまた違った方式だが、両方を比べてみるのもいいだろう。
またグレード別設定だが、ハンズフリーオートスライドドアの存在も面白い。これは車体下に足を差し入れるだけでスライドドアを開けることができる機能で、両手が塞がっているときに威力を発揮する。

走行性能はどうか
走り出して真っ先に気付いたのは妙なブレーキフィールだ。最初の信号で停止した際、制動力の立ち上がりが悪くドキッとさせられた。単純にこの車に慣れていない、というのもあるのだろうが、もう少しリニアな操作感が欲しいところだ。
乗り心地については特に気になる点もなく、全体的にソフトで快適である。サスペンションのセッティングは絶妙なところで、コンフォート寄りではあるが、ふらついて走行中に支障が出るようなことはなかった。
一方で加速感についてはガッカリな出来、と言わざるをえない。ある程度は予測していたつもりだったが、想像以上のモッサリ感である。交通の流れに乗って、まったりと走っている間は静粛性もそこそこで快適なのだが、いざ坂道などで加速しようとすると唐突にエンジンの回転数が上がり、ガサツなエンジン音が響いてくる。このあたりの性能を重視する人は、試乗の際にじっくり吟味しておいたほうが良さそうだ。

"自動"とは言えなかったプロパイロット
プロパイロットも今回初めて装備されたもので、「高速道路での一車線に限っては自動運転が可能に」などの前評判もあって期待していたのだが、その実態はレーンキープ付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の延長線上のものと言うべき代物であった。
実際に使ってみると、前述の加速の悪さもあって、前走車に置いて行かれることもしばしば。ハンドル操作のアシストについても、キツめのカーブではカクカクと断続的に操作しているのが分かるほどで、未だ過渡期的装備であるとの印象を拭えなかった。この種の装備の先駆的なものとして、スバルのEyeSight ver.3があるが、そちらのレーンキープの方が幾分丁寧な操作であるように思う。
とは言うものの、長距離走行の補助として有ると助かる装備であるのは間違いないし、このクラスに導入した事自体が意義のあることだとも言える。

総評
パワー感の無さだけは同クラスの競合車と比較しても歴然としているので、特に他メーカーからの乗り換えや、エルグランド等からのダウンサイジングを考えている人は十分な試乗を行うことをおすすめする。
それ以外の部分については価格以上の水準を持っており、ファミリーユースに限ってみれば非常によく出来た仕上がりと言える。先代同様に息の長いモデルになりそうであるから、今後の装備の発展にも期待したい。



2016/10/08

BMW 318i SEDAN 試乗記

ついにBMWが3気筒を積む時代になったか……。そう思いつつもディーラー営業氏(私の父の担当者)からの誘いにホイホイと釣られてきたので、早速感想を書こうと思う。車両自体はモデル後半であるので、エンジン以外については特に述べないこととする。



エンジン諸元
直列3気筒1.5Lターボ
136ps/4,400rpm
22.4kgm/1,250rpm-4,300rpm

第一印象
今回の試乗は一般道での0-60km/h前後の速度帯で実施。
まず、アクセルを踏んで動き出す瞬間は、思いのほかスムーズでストレスを感じない。低速から十分なトルクを発揮するエンジンのためか、優秀な8ATのためか、非常に扱いやすいのだ。これには良い意味で期待を裏切られた感じだ。もちろん大昔のターボ車のごとく、ある回転数から唐突に車が前に押し出されるようなこともなかった。通勤や買い物等、一般道での日常利用では全く問題のないパワーである。今回の試乗では試せなかったが、日本の峠道でも、パワーを使い切れる分、楽しく走れるのではないかと思う。

でも3気筒でしょ?
"4気筒に比べれば、サウンドやフィーリングは劣るんだろう"と、言う意見もあるだろう。それはそうだ。でなければ余分な金を出して320iを買う意味がなくなってしまう。しかし、「軽四と同じ形式」だとか「安かろうの手抜き品」だとか言った指摘は的を射ていないと言える。BMWとしてこれはこれでアリだな、といえるくらいの仕上がりにはなっているというのが私の感想だ。
国産の300万円台のセダンには4気筒2L NA(おおよそ150psくらいか)にCVTをくっつけたモッサリな代物もあるが、それこそ安普請であって、318iほどの満足は得られないだろう。

ネガな部分
非常に単純かつ明快な欠点が一つある。それは、ボディ、サスペンション、その他諸々がよく出来ているせいで、結局はパワーに満足できなくなるという点だ。先に述べたように日常での走行には全く支障がないのだが、高速のランプウェイや合流でグッと踏み込んだときに"ニヤリ"と来る感触が無いのだ。
こういうダウンサイジングだのエコだのといった話題が出ると、決まって多気筒大排気量を古典的かつ時代遅れとする言説が出てくるのだが、私は今しばらく古典派の枠に留まりそうである。



2016/10/01

営業の一日とは

多くの人にとって、ディーラーのショールムに立ち寄る回数は年数回、しかも商談でもなければ比較的短時間ということが殆どであろう(いや、イベントごとに必ず来ているぞ、という方には感謝)。営業マンが普段何をしているのか疑問に思われている方のために、大雑把ながら一日の流れを記そうと思う。



一日の始まり
まず早朝に出社すると、ショールムの清掃や試乗車の洗車が始まる。もちろん社会の常で下っ端新人は一番乗りしなければならない。殆どの場合、試乗車は洗車機に放り込むのだが、背の高いSUVは拭き上げに手間がかかるので大変だったのを覚えている。
店舗の準備が終われば朝礼だ。ラジオ体操をして、社訓唱和。どこにでもありそうな光景である。
ここで拠点長からの有り難い?講話と前日の成績発表が行われ、売れてない営業にとってのプレッシャーとなる。

いざ外回りへ
外回り、と言っても新聞や住宅の営業のように、個人宅へ上がり込んで行う"飛び込み"は殆ど行われなくなっている。基本的には既存客へのアフターフォローと土日の"決戦"に向けての種まき活動がメインとなる。
一番時間を取られるのが、点検の引取納車だ。平日に車を預かって点検して欲しいという客はかなり多い。職場へお邪魔するか、自宅に居る奥さんからカギを預かって帰ってくる。この時、客先の駐車スペースを見渡して、他社の車が止まっていないか、車検はいつか、等をさり気なくリサーチするのも重要な任務である。また、家人が車の所有者でなくとも、十分なコミュニケーションを取って顔を売ることも大事だ。時間調整の下手な人間は、この引取納車が単なるお使いか時間の浪費と化してしまい、結果的に売れない営業になってしまう。

点検以外にも・・・
点検の終わった車を返し終わっても、点検の案内や、登録関係の書類作成、保険の勉強会など、平日の業務は山ほど残っている。
突然、昔名刺を渡した新規客が店頭に現れUターンなどのハプニングもしばしばである。予定の立て難さ、という点で車の販売の右に出るものはないだろう、と私は勝手に思っている(笑)

一日の終りとその後
昼間の活動が終わり、店舗に帰還しても業務は終わりではない。迷惑時間ギリギリまでは電話という営業手段が残されているし、新車の納車を控えていればその準備もしなければならない。定時で終わることはほぼ無いと言っていいだろう。そこから先に何時間の残業が待ち受けているかは、販社と拠点長の方針次第である。幸いに私が一番お世話になった方は家庭第一主義であったし、会社のシステムも時間制限付きであったので、理不尽な長時間労働は皆無であった。「上司より先に帰るとは何事か」というオーラを纏った昭和の残滓に使われている同業者諸君には同情を禁じ得ないが……。(もっともこの業界に限った話ではないのだが)



2016/09/24

偽ブレンボの見分け方とロゴ使用問題

ブレンボといえば泣く子も黙る高性能ブレーキの老舗ブランドであるが、その人気に当て込んで模造品も多く出回っている様子。それに対してブレンボから公式の注意喚起が出されているので、ここで紹介しておく。

ブレンボの正規品でない自動車用ブレーキ製品を見破る5つの方法
http://www.brembo.com/jp/company/news/brembo-car-brakes-anticounterfeiting


最近は手っ取り早く見栄えを良くする方法として、純正キャリパーの上からカバーだけ取り付けることも行われているが、堂々とブレンボのロゴが描かれている製品については明らかな商標の無断使用である。ブレンボとパチモノ製造業者間の問題ではあるのだが、購入する側にも自重が必要なのではなかろうか。



2016/09/18

そもそも自動車ディーラーとは

そもそも自動車ディーラーとは何ぞや?単にクルマ屋である、と言ってしまえばそれまでだが、少し掘り下げて解説してみようと思う。



自動車を売るだけにあらず
自動車の販売店です、と言ってもディーラーの営業マンが行うのは新車・中古車のPRだけではない。点検、車検の案内、自動車保険やJAFの勧誘も大切な業務である。逆に言えば、近年は車両の販売だけでは十分な収益が得られない、ということでもあるが……。具体的な数値の明示は避けるが、凡そ利益の半分程度はこれら「その他」の部分が占めると思ってもらっても良いだろう。
営業マンは当然、「その他」の部分に関する知識も豊富でなければならないし、同時に客に気取られぬように(不快感を与えぬように)その業務を圧縮して楽をするかを考えなければならない。で、なければ新車など悠長に売っていられないのである。

「トヨタで働いてます」と言っても……
自動車ディーラー(販売会社)と自動車メーカー(トヨタ、日産、ホンダetc……)は別物であるということは知っておいたほうが良いだろう。これは未だに勘違いしている人が多い点であるが、○○トヨタカローラの営業やメカニックはトヨタ自動車に籍を置いているわけではない。大手に就職できたと思っている就活生や父兄がいるとしたら、大変恥ずかしい思い違いをしているわけである。気をつけておこう。

正規販売店と業販店
自動車の販売店のうち、一般に「正規販売店」と呼ばれるものの定義とは、メーカーと直接の取引があり、特定車種の独占販売契約を結んでいる販売店ということになる。それ以外には個人経営の整備工場や中古車販売店が業販店(サブディーラー)として存在しており、これらは各地方の販社の業販部門、又は業販専門の販社から新車の仕入れを行っている。多くの個人客がショールームで商談をしている間、裏手の事務所では卸の業務も行われているのである。
※業販と対称に個人客相手の販売形態を直販と称する。

メーカー系と地場資本系に分けられる
正規販売店はその形態として、メーカー系と地場資本系に大別できる。メーカー系は読んで字の如く自動車メーカーの子会社で、経営幹部としてメーカーの人間が出向するなど人員の交流も存在する。一方で地場資本系の場合は、地元の有力者が経営者となり、各ブランドの看板を掲げている。例えばホンダカーズ東京などは大規模な地場資本ディーラーの良い例で、かつては日本バイク工業という二輪屋さんが大きくなったものである。

販売系列ごとに違うラインナップ?
一自動車製造会社が複数のブランド、及び販売経路を持つという方式は、GMのアルフレッド・スローン(1875-1966)の時代に確立されたもので、本邦においてもバブル期前後には多く見られた。現在では複数チャネル方式を取るのはトヨタのみとなっているが、レクサス、トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツの各店舗で販売車種の構成が全く異なることに気を付けなければならない。